1歩進んで2歩下がる。

晩餐は「檻」のなかで


晩餐は「檻」のなかで
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書評/ミステリ・サスペンス


この物語の最大の特徴は「檻」の【内】と【外】、それぞれで展開する物語が並行して語られることにある。

まず、「檻」の内側の物語は・・・

未来の日本で「仇討ち」が制度化された。物語はその制度実施第一号の場で展開する。
「檻」と呼ばれる建物に集められた7人の男女。
彼らに与えられた役割は、「殺人者」「被害者」「共謀者」「傍観者」「邪魔者」「監視者」「探偵」。
自分以外の役割を知らされず、お互いに疑心暗鬼になりながらも事態は進行していく・・・という推理小説。


そして外側では、泣かず飛ばずで、なにかとダメダメで自分の子どもにも少し冷たくされているような作家・錫井イサミの情けない日常が描かれる。
周りから小馬鹿にされ、売れないどころか出版もされない作家が追い詰められて、それこそワラにもすがるような必死さと、自分は文学者だ!という歪み気味の自尊心が絡まりあって、事態は妙な方向へと転がっていく。
この錫井という作家はなんとなく、高校生の頃に読んだ筒井康隆の短編小説に出てきそうな雰囲気だなぁ・・・と思いながら読んでいた。


【外】の世界の主人公である売れない作家が小説を書いている。途中までの出来に満足している様子。彼について描かれるのは執筆活動ばかりではなく、子どもの世話をしたり、稼ぎのある妻に頭が上がらない様子。

そして、物語が【内】に切り替わる。登場人物たちによって展開される推理と、計画通りに実行される殺人。特殊な状況下で、限られた時間の中でトリックを見破らなくてはならない


テンポよく切り替わる二つの物語だが、僕はダメダメな作家・錫井が登場する【外】の物語を楽しんで読んでいた。
【内】のほうは、入り組んだトリックがあるとはいえ結末として犯人が明らかになり、7人の役割もはっきりするだろうな・・・と予測がつく。
しかし【外】では、引くクジ引くクジ必ず貧乏クジという感じの情けない作家が、本人の思惑に関係なしに転がっていく様子が描かれていて、「こいつはこの先どうなっちゃうんだ!?」とちょっと心配すらしながら読み進んでいた。


そして最終章。

この本の帯に「あなたは、驚天の結末を予想できるか!」とあるのはこういうことだったのか!!やられたっ!と感じていた。


人間のダメさや汚さが描かれた【外】の世界の登場人物は、自分の近くにいたらイヤだけど個性的というか、アクが強くて魅力的とは言えないまでも印象深い。

それに対して【内】の7人については、人物像が浮き上がってくるほどの存在に感じることができなかったように思える。・・・それも、【内】と【外】とが絡み合うこの小説の本質を知ったら納得・・・できちゃうのかもしれないけれど。


評価(★5つで満点):★★★★

コメント

ありがとうございます。

west32さん、コメントありがとうございます。
僕の書いた文章を読んでそのように感じていただけて光栄です。
これからもよろしくお願いいたします。

「本が好きプロジェクト」を観て来ました。
内と外、面白い設定のようですね、手に入れ、読んでみたくなりました。
ありがとうございました。

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