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「感動」禁止! 「涙」を消費する人びと


「感動」禁止! 「涙」を消費する人びと
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livedoor BOOKS
書評/ルポルタージュ


スポーツイベントのたびに繰り返される「感動を、勇気をありがとう!」の声。映画や小説の売り文句として、ウンザリするほど目にする「感動」「涙」「泣ける」というワード。

この本、帯に『感動をありがとう』って気持ち悪い!!とあり、最近のニッポンを覆う妙な風潮に真正面から切ってかかる。

実を言うと、僕はオリンピックとか、サッカーのワールドカップとか、非常にどうでもいい。というかむしろ嫌悪している。テレビニュースを見ていて、その手のニュースに切り替わったら反射的にチャンネルを替えてしまう。

とことん鍛えぬいたアスリートが自己の限界に挑み続けて世界の舞台で戦う、ということ自体は素晴らしいことだと思う。しかし、その様子を報じるマスコミはいちいち「感動のドラマ」を無理やりにでも捩じ込んでくる。

勝敗のシビアな世界に生きるアスリートにとって、観客たちの「感動」とか「勇気」といった情緒なんてどうでもいいことなのに。まさか、戦時中をはるか60年以上離れたこの時代に「お国のために」「国威発揚のために」世界の舞台でスポーツをやるわけでもないのに、何を言っちゃっているんだろう、と思ってしまう。
小説を読むのは大好きだけど、帯に「感動」だの「涙」だのあると、僕は「おいおい、ちょっと勘弁してくれよ」とテンションが下がってしまう。

みんなで同じ方向を向いて「感動をありがとう!」と虚ろな目で涙を流す姿を勝手に想像して、「うわぁ、気持ち悪うっ!」と思ってしまう。この人たち、どっか病気なんじゃないのか?集団ヒステリーの中で洗脳されちゃっているんじゃないのか?と自分を棚にあげて心配してしまう。


本書は、現代のニッポンを覆う「感動」現象を、戦後の日本経済において大きなボリュームで担い続ける団塊世代の心理的・社会的背景、そして彼らと二人三脚で成長してきた消費社会・戦後日本の分析という視点で分析している。

「涙」が経済活動の対象となり、貨幣価値を持つものとして消費される存在になっていることに対する違和感が、著者が筆を執った動機であるとまえがきで語られている。


5章から成る本書の1〜4章は、団塊の世代の青春時代、戦後の消費社会の隆盛とバブルとその崩壊、フェミニズムと消費の関係、高度消費社会としての現在の日本を分析しており、なかなかに興味深く読み進むことができる。

ふむふむ、戦後社会をこうやって分析して、薄っぺらな「感動」が横行する現在のニッポンをどんな風に読み解いていくのだろう・・・と期待しながら読むことができる。

しかし残念なことに、(おそらくは)本書のメインである第5章との内容において、つながりが希薄に感じられてしまう。

最終章でナンシー関のコラムを引いているあたり、「おぉ!もっとそのあたりのことを書いてくれ!!」と引き込まれるのだが、あっさりと他の話題に移ってしまい、消化不良という印象を持ってしまう。もしも、ナンシー関が存命であったら、著者との対談を実現して欲しかったものだとつくづく惜しまれる。

戦後日本の消費社会、という大きな視点から最近の風潮を捉えようとしたために、論点がぼやけてしまって著者も一番語りたかったことを語りきれなかったのでないか、との印象を受けた。

主にマスメディアが垂れ流す、お仕着せの「感動」を分析するために、メディア分析の視点も取り入れた続編が出ることを期待してみたいと思う。

評価(★5つで満点):★★★

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