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腐蝕生保


腐蝕生保
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書評/経済・金融


小説を読むことの楽しみの大きなひとつは、登場人物、特に主人公に自分を投影し、重ね合わせて感情移入しながら読み進めることにあるのではないだろうか。

そして、感情移入がしやすい登場人物とそうでない登場人物というのは、読む人によって大いに異なると思う。

その登場人物のタイプをざっくり2つに分けてみる。

ひとつは、どうにもダメなところばかり目に付くけれど、放っておけないというか、「がんばれ!」と応援しながら、登場人物が成長していく様子についつい引き込まれていってしまうタイプ。
もうひとつは、何をやってもカンペキで、格好いいタイプ。少年たちが憧れるヒーローのような存在なのかもしれない。

この「腐蝕生保」の主人公、吉原は後者のタイプに属すると思う。
国内ナンバーワン生保のエリートコースを驀進する男。仕事は文句なしにバリバリできるし、上司にだってガツンと言うことを言う。そして語学堪能で、周囲の人間を味方にすることにも長けていて、おまけに妻子ある身でありながら、女性にだってモテる。

巨大で伝統的、そしてナンバーワン企業であるがゆえに社員に浸透した傲慢ともいえるプライド。出世のために上の顔色ばかり伺って、保身とゴマすりのことしか頭にない周囲の人間たち。保身とゴマすりで出世した上層部が派閥の論理で支配する会社組織の中で奮闘する主人公。


こう書くと、胸がすくような爽快な物語のようだが、そういうわけではない。

熱いエリートを絵に描いたような主人公は、自分を重ね合わせるにはどうにも僕からは程遠すぎて、この小説の登場人物に感情移入して読み進めるということができなかった。

物語の中で、主人公・吉原が上司に喧嘩を売る場面が何度も出てくるのだが、その度に口にする科白が「それなら、私は辞めます」なのが違和感を覚えてしまった。エリートと言えどもサラリーマンが切ることのできるカードはそんなものなのか、という軽い失望もおぼえた。

そして、ラストでもストーリーにドラマチックな変化が出るわけでもないことも残念と感じる。

ワタミフードサービスの創業者、渡邉美樹氏をドキュメンタリータッチで描いた高杉作品「青年社長」を読んだ時に得た、爽快な読後感は得られない。企業社会の暗部をえぐる作品で定評がある高杉作品の中で異端と評される「青年社長」しか読んだことがなかっただけに、同じような読後感を期待していた僕が間違っていたのだと思うけれど。


もちろん、評価できるところもある。経済小説の大御所・高杉良氏の作品だけあって、生保業界の歴史、特に金融ビッグバンと言われた時期以降の業界の様子は詳しく書かれている。

そして、職場のスタッフを連れた宴会の会場として「和民」が何度か登場するのは、「青年社長」を愛読した読者へのサービスかな?と嬉しくなることもできる。

読者である僕が、年齢を重ねて成長し、主人公・吉原のように組織の中枢を担うような人間になったら、この作品の理解の仕方も変化しているのだろうな、と思う。

評価(★5つで満点):★★★

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腐蝕生保

週刊ダイヤモンドに連載されていた高杉良の経済小説「腐蝕生保」の単行本上下巻とも読み終えた。高杉氏の著作は「ザ・外資」以来だが、保険業界に関心があるせいか、すぐに惹きこまれて長編ながらもスムーズに読むことができた。著:高杉 良出版社:新潮社定価:1890円(...

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